■ 青い空と赤い夕焼けは表裏一体
前回のメイン記事(Q1.なぜ空は青いのか?)では、空が青く見える理由を「レイリー散乱(Rayleigh scattering)」という現象で理解しました。
でも、調べて知れば知るほど、1つの疑問が強くなっていきました。
なぜ、夕方には空が赤く見えるのか
気になりますよねー
実はこの夕焼けも、同じ現象で説明できるみたいです。
■ レイリー散乱の基本復習:波長が短いほど強く散乱される
レイリー散乱とは、大気中の分子(酸素・窒素など)によって可視光線のうち波長の短い光(青・紫)が強く散乱される現象でした。これにより、昼間は、空全体が青く見える。
Rayleigh, Lord. (1871). On the light from the sky, its polarization and colour. Philosophical Magazine, 41, 107–120.
この原理に従えば、夕方にも青い光が散乱されているはずでは?
にもかかわらず、なぜ赤い光が目立つのか。
■ 昼と夕方の違いは光の「通過距離」にあり
日中、太陽は高い位置にあり、太陽光は比較的短い距離を通って大気を突き抜けます。一方、夕方の太陽は地平線近くにあり、光は斜めに大気を進むため、その通過距離は昼間の最大約38倍【1】にもなるそうです。
【1】Bohren, C. F., & Clothiaux, E. E. (2006). Fundamentals of Atmospheric Radiation. Wiley-VCH.
その結果、以下のような現象が起こります(Fig.1)。
- 青や紫など波長の短い光は、途中でほぼすべて散乱されてしまう
- 散乱されにくい波長の長い赤や橙の光が、残って私たちの目に届く

Fig.1
つまり、
夕焼けは「赤い光が届いている」のではなく「青い光が削ぎ落とされた結果」
重要なのは、夕焼けが赤く見えるのは「赤が増えたから」ではなく「青が減ったから」という点です。
昼間の空も夕方の空も、太陽は同じように全色を放っています。
ただし、夕方には短波長の光が大気中に消えてしまうため、 残された“長波長の光”、つまり赤色だけが私たちに届くのです。
■ 補足:光の散乱と大気中の微粒子の関係
火山噴火や黄砂のように、大気中に粒子が多くなると、夕焼けがより赤くなることがあります。
これは「ミー散乱(Mie scattering)」という、粒子の大きさが光の波長と同程度のときに起こる別の散乱現象になります【2】。
【2】Bohren, C. F., & Huffman, D. R. (1983). Absorption and Scattering of Light by Small Particles. Wiley.
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